rukbatの世界分散投資

30代後半のサラリーマンが国際分散投資で早期退職を目論むブログです。

GPIFが国債を買っても意味ないんじゃ?

先日、GPIFが「保有全銘柄について(2017(平成29)年度末)」という資料を公開したので、なんとなく眺めていました。すると、1銘柄あたりの投資額が群を抜いているものがありました。その銘柄は、日本国債です。GPIFは、156兆円の資産のうち、実に37兆円を日本国債に投資しています。これは、正しい選択なのでしょうか?

GPIFとは?

GPIFとは、正式名称を年金積立金管理運用独立行政法人といい、国民年金と厚生年金の積立金を運用するところです。日本の公的年金制度は、賦課方式と呼ばれていて、現役世代が払った保険料を、現在の高齢世代に配るという方式で運営されています。このため、本来なら積立金は発生しません。しかし、少子高齢化が進むと現役世代の保険料だけでは高齢世代の年金をまかないきれなくなるため、現役世代がある程度多いうちに保険料を多めにとって、積み立てていました。「いました」と過去形なのは、団塊の世代が退職し、年金受給者が増えた一方で、現役世代は減っており、すでに積立金の取り崩しが始まっているからです。
ただし、単に積立金を取り崩していってもジリ貧なので、政府は積立金を運用して増やそうとしています。この運用を担っているのがGPIFです。実際、年金会計にGPIFから納付金を出していますが、運用のおかげでGPIFの積立金は増えていっています。個人が自分の資産を運用して自分年金を作ろうとしているのと同様のことを公的年金でも実施しているのです。

日本国債が多いのは当たり前?

日本で生活していると、ポートフォリオの何割かを日本国債にするというのは普通のことです。また、直接日本国債を買っていなくても、投資信託を通して持っていたり、銀行預金も実質時には日本国債に投資しているようなものです。直接にしろ、間接にしろ、日本人の多くが日本国債に投資していると思います。
しかし、GPIFも同じで良いのでしょうか?

投資の目的はお金を増やすことではない

このブログを読んでくださっている方は、投資をしている、またはしようとしている方が多いと思いますが、みなさんの投資の目的は何でしょうか?お金を増やすことでしょうか?でも、単にお金を増やしても、貯め込むだけでは、口座の残高の数字が増えるだけで意味がありません。(それだけで悦に浸れる人もいますが。)投資の本当の目的は、増やしたお金を使って何かをすることだと思います。老後の心配を減らしたいとか、車がほしいとか、そういうお金があれば実現できる希望を叶えることが、お金を増やす目的であり、それが本当の投資の目的であるはずです。逆に、この本当の目的が実現しなければ、いくらお金が増えても投資の目的が達成されたことにはなりません。ちなみに、私は働かずにそこそこの生活をしたいという野望を持って投資をしています。実現できるといいのですが。
このような考え方で、GPIFが投資をする目的は何でしょうか?それは、GPIFのホームページに書いてあります。

  • 我が国の公的年金制度(厚生年金及び国民年金)は、現役世代の保険料負担で高齢者世代を支えるという世代間扶養の考え方を基本として運営されています。
  • 一方、少子高齢化が進む中で、現役世代の保険料のみで年金給付を賄うこととすると、その負担が大きくなりすぎることから、一定の積立金を保有しつつ概ね100年間で財政均衡を図る方式とし、財政均衡期間の終了時には給付費の1年分程度の積立金を保有することとし、積立金を活用して後世代の給付に充てるという財政見通しが立てられています。
  • この財政見通しで想定されている年金財政上必要な運用利回りを確保し、年金事業の運営の安定に資することが、GPIFの使命であると考えています。言い換えれば、年金財政上必要な運用利回りを確保できないことが、GPIFにおける最大のリスクです。
http://www.gpif.go.jp/about/philosophy_chap01.html

ごちゃごちゃと書いていますが、要約すると、「現役世代の負担を抑えつつ、高齢世代に充分な給付をしたい」ということです。前にも書いたとおり、日本の公的年金制度は賦課方式をとっていますから、高齢世代に充分な給付をすると現役世代の負担が重くなり、現役世代の負担を軽くすると高齢者世代への給付が不足するというジレンマに陥ります。そこで、投資で積立金を増やせば、現役世代の負担を抑えつつ高齢世代に充分な給付をできるようになるということです。つまり、GPIFは現役世代の負担を抑えつつ積立金を増やさなければ意味が無いのです。

国債の利子も社会保険料も原資は同じ

ここで、国債について考えて見ます。国債を買うと何故お金が増えるのでしょうか?それは、もちろん、利子がもらえるからです。国債を買うと元金以外に利子をもらえるので、その分が儲けとなります。では、誰が利子を払っているのでしょうか?当然、日本国債の利子を支払うのは日本国です。通常、会社が社債を発行すると、借りたお金で事業をしてその儲けで利子を払います。しかし、国は国債を発行しても事業をするわけではないので、儲けは出ません。それでは、国はどうやって利子を払うのかと言うと、国民から税金をとって利子を払います。つまり、儲けた人(=現役世代)の儲けの一部を徴収して、国債の利子を払います。そして、その利子をGPIFがもらい、高齢世帯への給付に充てるという構図になります。つまり、国債の利子でGPIFが儲けて高齢世帯に配っても、現役世代から社会保険料を徴収して高齢世帯に配るという通常の賦課方式の年金と何も変わらないのです。

GPIFが日本国債を買っても年金問題は解決しない

以上のことから、GPIFが日本国債を買っても現役世代の負担を抑えるという目的を達成できません。単に社会保険料という名目で徴収されるお金が減り、税金の名目で徴収されるお金が増えるだけなのです。現役世代の負担は何も変わりません。*1
個人のポートフォリオではリスク低減に重要な日本国債ですが、GPIFのポートフォリオで2割も保有するべきなのでしょうか?

*1:厳密には、税金は高齢世代も払っているため、税金の増加と社会保険料の減少が等しい場合、税金の方が頭数が多いので、現役世代にとっては税金の増加額より社会保険料の減少額の方が大きく、有利になります。しかし、その差額は高齢世代から税金を取ることで実質的に給付を減らしているに過ぎません。つまり、社会全体では現役世代の負担を減らした代わりに高齢世代の給付も減らしただけで、GPIFの目的に合致していません。