外国に投資するファンドの多重課税問題
前回の記事で触れたように、外国に投資する投資信託は、多重課税の問題が発生します。今回は、このような投資信託の税金について考えてみたいと思います。
なお、以下の内容は私が色々なも調べた結果ですが、間違っている可能性もあります。もし、間違いがあればコメントやお問い合わせページでご指摘いただければ幸いです。
株式に直接投資した場合の税金
まず、株式に直接投資した場合を考えます。株式に直接投資した場合は、配当金と売却益の二種類の所得が発生しますが、それぞれに税金がかかります。しかし、日本の株式に投資した場合と外国の株式に投資した場合で税金のかかり方が違うのでそれぞれについて見ていきます。
投資信託に投資した場合
投資信託に投資した場合、投資家が直接支払う税金は、株式に直接投資した場合と変わりません。ただし、投資信託が支払う税金があるため、実質的にはそれ以上の税金を支払うことになります。この時、重要になるのがパススルー課税の有無です。
所得税は、利益を得た人に課税するというのが根本的な考え方です。ところが、投資信託は他人のお金を運用しているだけなので、投資信託が売却益や配当金を得ても、投資信託自体は儲かっておらず、実際には個々の投資家の資産が増えているだけです。このため、投資信託が売却益や配当金を得ても課税せず、投資家が投資信託を売却して利益を得たり、分配金を受け取った時に課税する制度があります。この制度をパススルー課税と呼びます。投資信託をパススルーして(通り越して)課税するという意味です。
ところで、投資家にとっては有利なパススルー課税ですが、税金を徴収する側からは課税逃れの温床にも見えます。そのため、対象となる投資信託は法律で決まっています。これは、外国の投資信託(=その国の法律に規定されていない)は、パススルー課税が適用されないということを意味します。この点が、多重課税の問題を生む原因となっています。
以下で具体的な例を見てみましょう。
日本の投資信託を通して日本の株式に投資した場合
日本の投資信託を通して日本の株式に投資した場合は、上図のように、投資信託が利益を得た段階ではパススルー課税が適用されるので、支払う税金は投資家が投資信託を売買して得た売却益と分配金に日本の税金がかかるだけです。このため、二重課税になりません。
日本の投資信託を通して外国の株式に投資した場合
日本の投資信託を通して外国の株式に投資した場合は、上図のように、投資信託が利益を得た段階でパススルー課税が適用されないので、投資信託が相手国に税金を支払わなければなりません。また、株式を直接買った場合は外国税額控除が受けられましたが投資信託を通すと受けられないため、この場合は二重課税になります。
外国の投資信託を通してその国の株式に投資した場合
外国の投資信託を通してその国の株式に投資した場合は、上図のように投資信託が利益を得た段階ではパススルー課税が適用されるので、投資信託が支払う税金はありません。投資家が直接支払う税金は、投資信託の国と日本の両方に支払う必要がありますが、投資信託の国に払った税金は外国税額控除で返ってくるため、二重課税になりません。
外国の投資信託からその国以外の株式に投資した場合
外国の投資信託を通して、その投資信託が設定されている国以外の株式に投資した場合は、上図のように投資信託が利益を得た段階でパススルー課税が適用されず、投資信託が株式の国へ税金を支払う必要があります。また、投資家が直接支払う税金は、投資信託の国と日本の両方に支払う必要がありますが、外国税額控除が適用できます。結局、この場合は株式の国と日本の二重課税になります。