rukbatの世界分散投資

30代後半のサラリーマンが国際分散投資で早期退職を目論むブログです。

楽天・全世界株式インデックス・ファンドの二重課税額

前回、前々回と、外国に投資する場合の税金について見てきましたが、今回は具体的にどれくらいの税金を余分に払う必要があるのかを考えたいと思います。



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国税の税率

楽天・全世界株式インデックス・ファンドが外国に支払う税金を計算する前に、まず、外国に支払う税金の税率を知る必要があります。しかし、これが一筋縄では行きません。なぜなら、外国に支払う税金の税率は、基本的に投資元と投資先の二国で結ばれた租税条約によって決められているからです。例えば、日本からアメリカの株式を売買した場合、アメリカの税金は、配当金に10%かかりますが、売却益にはかかりません。その他、配当金にも税金がかからない場合もあれば、売却益にも税金がかかる場合があるなど、相手の国によって様々です。また、アメリカと同様、配当金にのみ税金がかかる場合でも、税率が異なる場合もあります。
このように、どの国からどの国へ投資するかによって、かかる税金は異なります。しかし、そんなものを一々計算することはとてもできません。そこで、ざっくりと国を跨いで投資するときは日本からアメリカに投資する場合と同じく配当金にのみ10%の税金がかかり、同一国内に投資するときはパススルー課税が適用されて税金はかからないものとして計算します。

地域ごとに配当利回り

前項で外国税は配当金にかかると仮定しましたので、外国税の額を出すには地域ごとに株式の配当利回りが必要になります。これについては、各地域を代表するETFの分配金利回りに経費率を足して計算しました。*1
その結果をまとめると次の表のようになります。

地域 代表する
ETF
分配金
利回り
経費率 配当
利回り
アメリ VTI 1.81% 0.04% 1.85%
アメリカを除く
先進国
VEA 2.52% 0.07% 2.59%
新興国 VWO 2.28% 0.14% 2.42%
全世界 VT 2.12% 0.11% 2.23%

分配金利回りと経費率は、morningstarの以下のページから引用しました。

また、以下で日本株配当利回りも必要になりますが、VEAと同じとします。

楽天・全世界株式インデックス・ファンドの外国税

それでは、楽天・全世界株式インデックス・ファンドでどのくらいの外国税を払わなければならないかを考えます。楽天・全世界株式インデックス・ファンドが投資するVTの地域ごとの構成比を見ると、アメリカが53%、アメリカ以外の先進国が38%(内、日本が8%)、新興国が9%です。

アメリカ株の配当に対する税金

アメリカ株からVTに配当金が支払われる場合は、パススルー課税が適用されるので、税金はかかりません。

アメリカを除く先進国株の配当に対する税金

アメリカを除くの先進国株は配当利回りが2.59%ですから、楽天・全世界株式インデックス・ファンドに対して、投資総額に対して、アメリカを除く先進国株式から
0.38×0.0259=0.009842=0.9842%
の配当金が支払われていることになります。このうちの10%を、個別株の国籍の国に税金として支払うことになりますから、
0.9842%×0.1=0.09842%
の税金を支払っていることになります。

新興国株の配当に対する税金

同様に新興国株式の配当金に対する税金を計算すると、
0.09×0.0242×0.1=0.0002178=0.02178%
となります。

VTの分配金に対する税金

さらに、VTから楽天・全世界株式インデックス・ファンドに分配金を支払うときも、アメリカに10%の税金を支払う必要があります。VTの分配利回りが2.12%ですから、
2.12%×0.1=0.212%
アメリカに支払う税金になります。

国税の合計

すべてを足すと、
0.09842+0.02178+0.212=0.3322%
になります。
楽天・全世界株式インデックス・ファンドの信託報酬が楽天とバンガードの分を合わせて0.24%ですから、それ以上の外国税を支払う必要があるというのは驚きです。
ただし、この事実だけで、楽天・全世界インデックス・ファンドが不利だと判断するのは早計です。国内の投資信託でも外国に支払う税金は発生するので、次は、国内の投資信託に投資した場合に支払う外国税を計算してみます。

国内の投資信託を組み合わせた場合の外国税

比較のために国内の投資信託を組み合わせてVTと同様の構成比(アメリカ株53%、日本株8%、アメリカと日本以外の先進国株30%、新興国株9%)で投資したと考えます。
この場合、投資信託が日本以外の株式から配当を受け取ったときに外国税が発生しますので、それぞれ計算していきます。

アメリカ株の配当に対する税金

アメリカ株式の配当金に対する税金を計算すると、
0.53×0.0185×0.1=0.0009805=0.09805%
となります。

日本株の配当に対する税金

日本株から日本の投資信託に配当金を支払う場合、パススルー課税が適用されるため、税金はかかりません。

アメリカと日本を除く先進国株の配当に対する税金

アメリカと日本を除くの先進国株の配当金に対する税金を計算すると、
0.30×0.0259×0.1=0.000777=0.0777%
となります。

新興国株の配当に対する税金

同様に新興国株式の配当金に対する税金を計算すると、
0.09×0.0242×0.1=0.0002178=0.02178%
となります。

国税の合計

すべてを足すと、
0.09805+0.0777+0.02178=0.19753%
となります。

結論

以上のことから、楽天・全世界株式インデックス・ファンドは、他の投資信託に比べ、0.14%ほど多くの外国税を払わなければなりません。これは、通常の投資信託であれば、外国から投資信託に配当が支払われたときの1回しか外国税を払う必要はありませんが、楽天・全世界株式インデックス・ファンドに投資すると、アメリカ以外の国からVTに配当が支払われるときと、VTから楽天・全世界インデックス・ファンドに分配金が支払われるときの2回、外国税を払う必要があります。このように、外国の投資信託を経由すると、税金を払う機会が増えてしまいます。単純に信託報酬の差だけで投資先を選ぶのではなく、余分に払わなければならない税金のことも考えて投資先を選ぶ必要があると思います。
なお、VTIに投資する楽天・全米株式インデックス・ファンドであれば、アメリカ株からVTIに配当を支払うときは課税されず、VTIから楽天・全米株式インデックス・ファンドに分配金が支払われるときのみ課税されるため、国内の他の投資信託と課税される回数は変わりません。このため、アメリカ株に投資するファンドを選ぶ場合、楽天・全米株式インデックス・ファンドが第一候補になるのは間違いないでしょう。

H29.11.13追記
分配金利回りの出典をbloombergからmorningstarに変更し、税率を再計算しました。
bloombergの分配金利回りは、直近の分配金×年間分配回数÷価格で計算しているようで、VWOの利回りを高く、VEAの利回りを低く見積もり過ぎていました。morningstarの分配金利回りは、過去1年の分配金合計÷価格で計算しているようなので、こちらの方が正しい利回りに近いと考えます。

*1:ETFは、受け取った配当金から経費を除いた全額を分配金にしているので、この方法で配当利回りが求められます。