ETFより無分配投資信託の方が効率が良い
これまで書いた、
資産クラスごとの投資銘柄選定 ー国内債券編ー - rukbatの世界分散投資
資産クラスごとの投資銘柄選定 ー国内株式編ー - rukbatの世界分散投資
資産クラスごとの投資銘柄選定 ー先進国債券編ー - rukbatの世界分散投資
に続いて、先進国株式編を書こうと思い、真面目に無分配投資信託とETFの収益の差について計算してみました。すると、表題の通り、無分配投資信託の方が効率が良いということが分かりました。これまで、ETFの方が効率が良いという前提でリレー投資を基本戦略に据えていましたが、そんなものは面倒なだけで、むしろパフォーマンスを下げてしまうという恐ろしい結果です。税金の繰り延べ効果って思っていたより影響が大きいんですね。複利の効果恐るべしというところです。
無分配投資信託とETFの違い
無分配投資信託 | ETF | |
---|---|---|
購入/売却手数料 | 無し | 有り |
分配金 | 無し | 有り |
所有中の経費 | 高い | 安い |
税金 | 売却時のみ | 売却時と 分配金受取時 |
経費面では、購入/売却手数料は無分配投資信託が有利、所有中の経費ではETFが有利、税金については、税率は同じですが、無分配投資信託は売却時に一括で払うのに対し、ETFは分配金が出るごとに少しずつ払っていくことになります。つまり、ETFは増えた資産の一部が毎年税金として失われてしまいます。したがって、払った税金の分を運用して得られたはずの利益が得られなくなります。このため、途中で分配金を支払わない無分配投資信託の方が有利になります。この、「なるべくなら税金は後で払った方が有利」という現象を、「税金の繰り延べ効果」と呼びます。
まとめると、所有中の経費ではETFが有利、購入/売却手数料と税金では無分配投資信託が有利という構図になります。
無分配投資信託とETFのパフォーマンスの差
それでは実際に、無分配投資信託とETFのパフォーマンスの差を計算していきます。
計算方法
計算結果
それでは、具体的に計算した結果を収益に課税される場合と、課税されない場合(NISAを想定)に分けて見ていきます。
収益に課税される場合
上記の条件で、課税される場合の無分配投資信託とETFの売却額を下図に示します。これを見ると、両者の資産の伸び方はほぼ変わりません。細かく見ると、当初はETFの方が有利で徐々に差が広がり、14年後にETFが12,900円高くなります。その後、差が縮まり、24年からは無分配投資信託が逆転し、以後はどんどん差が開いていきます。投資期間が25年を超えることはそうそうありませんから、ほぼETFの方が若干有利と言えます。しかし、15年で13,000円程度の差ですから、経費率の低さと税金の繰り延べ効果がほぼ拮抗しており、どちらを選んでも大差はありません。また、この計算ではETFの売買手数料を無視しています。特に、米国籍ETFの場合、為替手数料も含めて片道4,500円程度の手数料が必要となり、それも考慮すると、ほぼ全期間に渡って無分配投資信託が有利という結果になりました。このような状況では、何かと面倒な米国籍ETFを選ぶ理由はありません。
ETFを買う理由は無い
以上のことから、ETFより無分配投資信託に投資すべきということが言えます。私はETF推しだっただけに、少しショッキングな結果です。ただし、次のような場合はETFの方が有利です。
- ETFの分配金が少ない場合。
- ETFと無分配投資信託の経費率の差が大きい場合。
- 投資信託に分配金が出る場合。
- 分配金を再投資しない場合。
- 金融機関に手数料を払うより、少し支払いが多くなっても税金を納めるほうが有意義だと考える場合。
ただ、これらの条件のうち、4と5に該当するかは自分の意思で決めればよいのですが、他の条件には判断基準が必要です。そして、3つの条件をひとまとめにした簡単な判断基準が存在します。それは、
というものです。投資のように、毎年数%ずつ増えていくような場合、最終的にどれだけ増えるかは、1年あたりどのくらい増えるかで最終的なリターンが決まります。そして、まさにこの1年あたりどのくらい増えるかを表している数値がになります。ざっくりと計算すると、無分配投資信託の方が0.3%大きいと、ETFの経費率の低さと無分配投資信託の税金の繰り延べ効果が拮抗します。先の、たわらノーロード先進国株式とVTIの経費率や分配利回りを用いると、この数値の差は0.311%だけ、たわらノーロード先進国株式が大きいため、ほぼ互角になる水準です。互角であれば、利便性を考えて無分配投資信託を買ったほうが良いと思います。逆に言えば、日本の無分配投資信託も、米国籍ETFとコスト面で互角に争えるくらいまで低コストになったということになります。日本を本拠としている私にとって、非常に喜ばしいことです。
*1:購入/売却手数料や信託財産留保額が無く、信託報酬がなるべく安いものを前提としています。